最適なテニスストリングは、何を優先したいかで決まります。快適さと楽に出る深さか、それとも強く振ったときのコントロールとスピンか。簡単に言えば、ナチュラルガットとマルチフィラメントは快適さとパワー寄り、ポリエステルはコントロールとスピン寄り、シンセティックガットは低価格のオールラウンダーで、ハイブリッドなら2種類を組み合わせられます。このガイドでは、各素材の特性、ストリングの構造、そして新しいストリングが本当に自分に合っているかを確かめるテスト方法を解説します。
ポイント
- ストリング素材は、ラケット購入後に行うほかのどの選択よりも、打感・パワー・快適さ・耐久性を大きく左右します。
- ポリエステルは速く大きなスイングに向いています。快適さや深さのサポートを求めるプレーヤーには、より柔らかい素材が合います。
- ハイブリッドはメインとクロスに別々のストリングを張る方法で、2つの特性のバランスを取れます。
- ゲージとテンションによって、どのストリングも打感が変わります。それぞれ専用のガイドがあります(下記リンク参照)。
- 判断する前に、変更は一度にひとつだけにし、同じテンションで数回のセッションをかけてテストしましょう。
主なテニスストリングの素材
現在販売されているストリングのほとんどは、4つの素材ファミリーのいずれかに属します。同じファミリー内でもブランドやモデルによって大きな幅があるため、以下の説明は決まったルールではなく、一般的な傾向として捉えてください。
| 素材 | 一般的な打感 | 一般的な長所 | 一般的なトレードオフ |
|---|---|---|---|
| ナチュラルガット | 柔らかく、弾きが良く、弾力がある | 快適さ、パワー、テンション維持性の高さ | 価格が最も高い、湿気に弱い |
| シンセティックガット(ナイロン) | 中程度 | 低価格、まずまずのオールラウンドな性能 | 特に秀でた分野がない |
| マルチフィラメント | 柔らかく、クッション性がある | ガットに最も近い快適さと打感 | プレーヤーによっては打感がぼやけて感じる。ハードヒッターだと摩耗が早い |
| ポリエステル(モノ) | 硬く、パワーは控えめ | コントロール、スピン、耐久性 | 腕への負担が大きい。テンションが落ちると性能も低下する |
ナチュラルガット
ナチュラルガットは牛の腸から作られ、ほかの柔らかいストリングが目指すお手本となる素材です。Tennis Warehouseのストリング素材ガイドでは、優れたプレー性能とテンション維持性を持つ一方、最も高価な選択肢だと説明されています。湿気にも弱く、たとえばBabolatは、張るまで光と湿気から守るためにナチュラルガットをホイルで包装しています。打感と快適さを重視し、そのためにお金をかけられるプレーヤーに向いています。
シンセティックガット
シンセティックガットは一般的にナイロン製です。価格の割に十分なプレー性能を持つ低予算の選択肢ですが、快適さ・スピン・耐久性のどれかで特に優れているわけではありません。テニスを始めたばかりの方や、ほかのストリングと比較するための基準ストリングが欲しい方には、手堅い出発点になります。
マルチフィラメント
マルチフィラメントは数百本の細い繊維を1本のストリングに束ねたもので、柔らかくクッション性のある反応が得られます。ガットのような快適さを手頃な価格で求めるプレーヤーの定番です。トレードオフは耐久性で、強いトップスピンをかけるプレーヤーは早く切ってしまいがちです。また、ポリエステルより反応の精度が低いと感じるプレーヤーもいます。
ポリエステル
ポリエステル(「ポリ」とも呼ばれ、ブレンドしたものは「コポリ」)は、プロレベルで主流のストリングです。硬くパワーが控えめなので、スイングの速いプレーヤーが思い切り振ってもボールがアウトしにくくなります。前述のガイドによれば、ポリエステルはほかの素材よりテンションが早く落ち、腕への負担も大きいため、初心者や肘・肩に不安のある方には一般的に第一候補になりません。
ハイブリッド
ハイブリッドは、メイン(縦糸)とクロスに別々のストリングを使います。最も一般的な組み合わせは、ポリエステルとマルチフィラメントやナチュラルガットなどの柔らかいストリングで、ポリエステルのコントロール性をある程度残しつつ打感を柔らかくすることを狙います。どちらをどこに張るかも重要です。メインに張ったストリングのほうがラケットの打感に大きく影響すると感じるプレーヤーが多く、2つを入れ替えると結果がはっきり変わることがあります。
ストリングの構造で打感はどう変わるか
素材は全体の一部にすぎません。ストリングの作り方も、その特性に影響します。
モノフィラメントとマルチフィラメント
ほとんどのポリエステルはモノフィラメント、つまり1本の中実な素線です。マルチフィラメントや多くのシンセティックガットは、多数の繊維で作られており、中心にコアを持つものもあります。大まかな傾向として、多繊維のストリングはクッション性が高く摩耗が早い一方、中実のポリエステルは硬めの打感で長持ちします。
形状、表面加工、コーティング
多くのポリエステルは、断面を五角形・六角形・八角形などに成形したり、表面に凹凸をつけたりしており、ボールへの「食いつき」が増すとうたわれています。ただ、根拠はマーケティングほど強くありません。Tennis Warehouse Universityが発表したラボ研究では、ボールへのグリップが強いストリングはスピンが増える可能性が高いものの、「必ずしもそうとは限らず、おそらく大幅に増えるわけでもない」と結論づけています。また、多くのストリングにはコーティングが施されており、ストリング同士が滑りやすくなるとうたわれていることがよくあります。
滑りやすいストリングがスピンに効く理由
Tennis Warehouse Universityのスピンポテンシャルの研究によれば、ストリング同士の摩擦が小さいとメインストリングがクロスの上を滑って元に戻ります。理想的なのは、ボールとの摩擦が大きく、ストリング同士の摩擦が小さい組み合わせだとしています。同大学のストリングの動きを撮影した動画では、ポリエステルがガットやナイロンより大きく、より多くの箇所で動くことが示されました。ポリエステルがスピンと結びつけられるのはこのためです。一方で同研究は、ストリング間の小さな差よりも、スイングの仕方やボールの来方のほうがスピンに大きく影響することも強調しています。
優先したいことでストリングを選ぶ
プレーヤーのレベルで選ぶのではなく、いちばん解決したいこと、改善したいことから考えましょう。そのうえで、その方向に寄った素材を選び、それに伴うトレードオフを受け入れることです。
快適さを優先するなら
ナチュラルガット、マルチフィラメント、またはメインかクロスに柔らかいストリングを使ったハイブリッドを検討しましょう。現在ポリエステルをフルで張っていて腕が悲鳴を上げているなら、ほかのどんな調整よりも、柔らかい素材に替えるのが最も直接的な対策です。
アウトが多いなら
硬めでパワーの控えめなストリング、通常はポリエステルを使うと、スイングの速いプレーヤーはより余裕を持てます。スイングが速くない方の場合、ポリエステルではボールが浅くなり、打感も硬く感じるだけかもしれません。これは自分でペースを生み出せるプレーヤー向けの選択です。
スピンを増やしたいなら
インパクト時にストリングが動いて戻りやすいため、ポリエステルが定番の選択です。成形や表面加工を施したポリエステルなら、多少上乗せできるかもしれません。それでも、どんなストリングよりスイングスピードと技術のほうが重要です。
ストリングがすぐ切れるなら
ほとんどのプレーヤーにとって最も耐久性の高い素材はポリエステルで、同じストリングでも太いものほど長持ちします。太さが耐久性・打感・スピンにどう影響するかは、テニスストリングゲージガイドで解説しています。
予算を最優先するなら
シンセティックガットが低価格の出発点です。ハイブリッドにすれば高価なストリングを長く使うこともできます。たとえば、ガットやマルチフィラメントを手頃なポリエステルと組み合わせる方法です。
新しいストリングを正しくテストする方法
ストリングは一度打っただけでは判断できません。素材に関係なく、新しいストリング面は使い込んだものとは打感が違うため、公平なテストにはある程度の手順が必要です。
変えるのは一度にひとつだけ
ラケット、テンション、ゲージは同じままにして、ストリングだけを変えましょう。ストリングとテンションを同時に変えると、どちらの変化を感じているのかわからなくなります。ラケットに記載された、またはメーカー推奨のテンション範囲から始めてください。そこからの調整方法はテニスストリングテンションガイドで解説しています。
同じ条件で比べる
可能であれば、同じラケットを2本用意し、1本は基準として現在のストリング、もう1本は新しいストリングで張りましょう。同じセッションの中で持ち替えて比べます。ラケットが1本しかない場合は、以前のセッティングが同じくらいの使用期間だったときに残した記録と、新しいストリングを比べましょう。
数回のセッションをかける
初日ではなく、数回のセッションを経てから判断しましょう。毎回同じ項目を記録します。深さ、アウトやネットミスの頻度、普段のショットのスピン、腕の快適さ、打感が変わっていく速さ。セッションごとに1〜2行メモしておくだけで、記憶に頼るよりはるかに信頼できる比較になります。
経時変化を見る
張りたては素晴らしいのにすぐ劣化するストリングもあれば、安定しているストリングもあります。打感をどれだけ長く保てるかも、評価の一部です。ストリング面が寿命を迎えたサインについては、テニスストリングの寿命のガイドで解説しています。
そのほかのセッティングは一定に保つ
ストリングのテストが公平になるのは、毎回の張り替えが同じ方法で行われた場合だけです。同じテンションを指定しても、ストリンガーやマシンが違えば結果が異なることがあり、変わったのがストリングなのか張り方なのか判断しにくくなります。よくメンテナンスされたマシンで自分のラケットを張れば、この変数をなくせます。良いストリンギングに何が必要かは、テニスラケット張り替えガイドで解説しています。
よくある質問
ポリエステルは腕に悪いですか?
ポリエステルはほかの素材より硬く、一般的に腕への負担が大きいとされています。問題なく使っているプレーヤーも多くいますが、肘や肩に違和感がある場合は、より柔らかい素材やハイブリッドを試してみるのが賢明です。
ハイブリッドはどちらをメインにすべきですか?
最も一般的なのは、メインにポリエステル、クロスに柔らかいストリングを張る組み合わせで、ポリエステルのコントロール性をより多く残せます。柔らかいストリングをメインに張ると、より柔らかく弾きの良い打感になると感じるプレーヤーも多くいます。一方を試して記録を取り、次にもう一方を試してみましょう。
Pro Stringerはオリジナルのストリングを作っていますか?
はい。Pro Stringer Stringsはポリエステルで、Blue SteelとSilver Bulletの2種類があり、それぞれミリ表記の2つの太さで販売しています。ほかのストリングと同じように、変更は一度にひとつだけ、すでに把握しているテンションでテストしてください。
次のステップ
いちばん大切な優先事項を選び、その方向に寄ったストリングを1本選んで、数回のセッションでシンプルなテストを行いましょう。自分でラケットを張るなら、Pro Stringerラーニングセンターにステップごとの動画があります。また、Pro Stringer CybeXは、テニス・バドミントン・スカッシュのラケットを張れる、当社のデジタルタッチスクリーン式マシンです。



