テニスのストリングに決まった寿命はありません。張った瞬間からテンションが落ち始め、多くは切れるずっと前に、思いどおりのプレーができなくなります。現実的な答えは、劣化したストリングのサインを知り、簡単な記録をつけること。そうすれば、勘に頼らず自分に合った張り替え間隔がわかります。
ポイント
- ストリングは張る作業中にテンションが下がり、最初の数打で急速に、その後は時間とともにゆっくり落ちていきます。ラケットをバッグに入れたままでも同じです。
- 特に影響が大きいのは、プレー頻度、スピンの量、ストリングの素材です。
- ポリエステルは切れにくい一方でテンションが早く落ちます。ナチュラルガットはテンションをよく保ちますが、湿気に弱い素材です。
- ノッチ(溝)、ほつれ、ずれたまま戻らないストリング、ミスの出方の変化をチェックしましょう。
- 短いプレー記録は、どんな一般論よりも多くを教えてくれます。また、保管中の熱によるダメージは防げます。
ストリングが劣化する原因
ストリングは消耗品です。いくつもの要因が同時に作用しており、プレー量に左右されるのはその一部にすぎません。
時間とともに落ちるテンション
どのストリングも、負荷がかかった状態では緩んでいきます。物理学者のRod CrossとRob Bowerは、張る工程そのものでテンションが大きく下がり、その後もラケットを使わなくてもゆっくり低下し続けることを確認しました(Cross・Bower、Sports Engineering、2001年)。Tennis Warehouse Universityが報告したラボテストでも、ストリングは最初の数打で大きくテンションを失い、その後は低下が緩やかになるものの、止まることはありませんでした。つまり、何か月も前に張ってほとんど使っていないラケットでも、ストリンガーから受け取ったときと同じ状態ではないのです。テンション低下がボールの飛び出し方にどう影響するかは、テニスストリングのテンションガイドをご覧ください。
摩擦とスピン
ショットのたびに、メインとクロスのストリングは互いにこすれ合います。Wilsonの張り替えガイドによると、この摩擦でストリングの交差部分に溝(ノッチ)ができ、攻撃的なプレー、スピンを多くかけるプレー、ベースライン中心のプレーではストリングの消耗が早まります(Wilson:テニスラケットはどのくらいの頻度で張り替えるべき?)。そのため、コートに立つ時間が同じ2人のプレーヤーでも、同じストリングの持ちが大きく変わることがあります。
プレーの頻度と強度
打つ回数が増えれば摩擦も増え、ストリングが擦り切れる機会も増えます。量だけでなくボールのスピードも重要です。激しいベースラインラリーを長時間続けると、同じ時間をタッチ系のドリルに使う場合よりもストリング面に大きな負担がかかります。
環境と保管
熱と湿気は、どちらもストリングの実用寿命を縮めます。これはもっとも簡単にコントロールできる部分なので、後述の保管のセクションで詳しく説明します。
張り替えどきのサイン
ストリング切れは最初のサインではなく、最後のサインです。その前に次の点をチェックしましょう。
- ノッチ(溝)。メインとクロスが交わるストリング面の中央を指でなぞってみてください。深い溝があれば、ストリングはかなり消耗しており、切れる可能性が高い状態です。
- ほつれ。ナチュラルガットやマルチフィラメントは細い繊維でできているため、消耗するにつれて繊維が切れ、ほつれてきます。ポリエステルは単一の繊維(モノフィラメント)なのでほつれません。そのため、実際には劣化していても見た目は問題なさそうに見えることがあります(Wilson)。
- ずれたまま戻らないストリング。ショットのあとメインが横にずれて戻らない場合、多くのプレーヤーはそれを劣化のサインと捉えます。この段階になると、スピンのかかり方も予測しにくくなりがちです。
- ミスの傾向が変わる。スイングは変わっていないのに、しっかり捉えたショットがアウトし始めたら、ストリング面のテンションが落ちている可能性が高いでしょう。コート上でのテストでも、テンションが低いと打ち出し角が高くなり、アウトするボールが増えることが示されています(Bower・Cross、Journal of Sports Sciences、2005年)。
- 打感が死んでいる、または硬い。Wilsonによると、ストリングは時間とともに弾力を失い、硬く死んだような打感になって腕への負担が増すことがあります。肘や腕に不安がある方は、早めに張り替えましょう。
「死んだ」ストリングの正体
プレーヤーはよく、古くなったストリングを「死んだ」と表現し、まるでパワーがすべて失われたかのように言います。Crawford Lindseyのラボ研究によると、通常のテンション低下による反発速度の低下はわずかで、プレーヤーが感じる違いの多くは、エネルギーの損失よりも摩擦やストリングの動きの変化から来ている可能性があります(テニスストリングはなぜ「死ぬ」のか(Part 2))。実際には、原因よりも結果のほうが重要です。ラケットの反応が予測できなくなったら、張り替えが必要です。
素材によるストリングの寿命の違い
素材によって、ストリングの消耗の仕方もテンションの落ちる速さも変わります。90種類のストリングを対象にしたラボテストでは、ナチュラルガットはテンション低下率がもっとも低い部類に入る一方、ポリエステルはどれも急速にテンションが落ちることがわかりました(Cross・Lindsey・Andruczyk、Sports Engineering、2000年)。
| 素材 | 切れにくさ | 劣化の仕方 | 注意すべき点 |
|---|---|---|---|
| ポリエステル(モノフィラメント) | 高い | ほかの素材よりテンションが早く落ちる。切れるずっと前に性能が落ちることがある | コントロールの低下、打感が硬くなる、ほつれという前兆がない |
| マルチフィラメント | ポリエステルより低い。繊維が摩耗する | Wilsonによるとポリエステルよりテンションの低下が緩やか。繊維が摩耗してほつれる | ほつれ(特に交差部分) |
| シンセティックガット(ナイロン) | ストリングによって異なる | ラボテストではポリエステルよりテンション低下が少ない。定番のオールラウンドな選択肢 | ノッチ、弾きの良さが徐々に失われる |
| ナチュラルガット | ポリエステルより低い。繊維が摩耗する | テンションをよく保つ。湿度が高いと水分をすぐに吸収する | ほつれ、湿気によるダメージ |
耐久性は、ストリング選びの一要素にすぎません。Wilsonは、ストリングをよく切る人には太めのゲージ、片方向にポリエステルを使うハイブリッド、またはフルポリエステルを勧める一方、ポリエステルの硬い打感は腕に問題を抱えるプレーヤーには合わない場合があると注意を促しています。素材ごとの打感や快適性の比較はテニスストリングガイド、太さについてはストリングゲージガイドで解説しています。
張り替えの頻度はどれくらい?
「1週間にプレーする回数と同じ回数だけ、1年に張り替える」という目安をよく耳にします。Wilsonはこの「昔からの目安」を紹介したうえで、それでは頻度が足りず、週1回未満しかプレーしない人も考慮されていないと指摘しています。こうした目安は目標ではなく、最低ラインと考えましょう。
より良い方法は、自分だけの張り替え間隔を見つけることです。間隔を決めるのはプレー頻度、ストリング、プレースタイル。短い記録をつければ、それが目に見えるようになります。
プレー記録で張り替え間隔を見つける
プレー記録は、毎回のセッション後に1分あれば書けて、当て推量をなくしてくれます。スマートフォンやラケットバッグに入れておきましょう。
- 張り替えを記録する:日付、ストリング、ゲージ、基準テンション、張った人。
- セッションごとにプレー時間を記録するとともに、内容(試合、ハードなラリー、ドリル)もメモします。
- 3つの項目を1〜5で採点する:コントロール(しっかり捉えたショットが狙いどおりに入っているか)、打感と快適性、スピン。ミスがどこに出たかもひと言添えましょう。
- 目に見える劣化をメモする:最初のノッチ、ほつれ、ずれたまま戻らないストリング。
- スコアが下がった時点に印をつける(2〜3セッション続けて下がったままの場合)。張り替えからの時間またはセッション数を数えましょう。それが、このストリングとこのプレーレベルでの目安となる張り替え間隔です。
これを2〜3回の張り替えで繰り返すと、たいていはパターンがはっきりしてきます。ストリングを変えたら、素材によって劣化の仕方が違うので、カウントをリセットしましょう。シーズンによってプレー量が大きく違う場合は、週数ではなくプレー時間で数えてください。
張りたてのラケットを基準にする
劣化は少しずつ進むので、気づかないうちに慣れてしまいがちです。ラケットが2本あるなら、1本を張り替えて、同じセッションで両方を打ち比べてみましょう。その差は、記録よりも多くを教えてくれることがよくあります。Wilsonは、予備のラケットも使っていない間にテンションが落ち続けるため、メインのラケットと同時に張り替えることを勧めています。
ラケットを正しく保管する
熱は、防げるテンション低下の最大の原因です。Tennis Warehouse Universityの調査では、ストリングが落ち着いた後のラケットを高温にさらす(暑い日に車内に置きっぱなしにするなど)と、テストしたすべての条件の中でもっとも大きなテンション低下が起きました(温度がテニスストリングのテンションと硬さに与える影響)。Wilsonも、ポリエステルは過度の熱や日光で劣化が早まり、ナチュラルガットは湿度が高いと水分をすぐに吸収すると指摘しています。
- ラケットを車内、直射日光の当たる場所、暖房器具のそばに置かないでください。
- 持ち運びにはバッグ(できれば断熱タイプ)を使い、室温で保管しましょう。
- 雨天や湿度の高い環境でプレーした後は、特にナチュラルガットの場合、水分を拭き取りましょう。
- ラケットをしまうときに、ストリング面にノッチやほつれがないか確認しましょう。
よくある質問
プレーしなくてもストリングのテンションは落ちますか?
はい。テンションは使用だけでなく時間の経過でも落ちるため、何か月も使っていないラケットは、張ったときよりも緩く感じます。見た目に問題がなくても、新しいシーズンの前には張り替えましょう。
ストリングが切れたらすぐに張り替えるべきですか?
はい。ストリンガーは通常、1本だけではなくストリング面全体を張り替えます。ストリングをよく切る場合は、まずゲージと素材を見直しましょう。
次のステップ
Pro Stringerは、元ATPプレーヤーでニュージーランドのデビスカップ代表でもあったRubin Stathamが、ツアーで品質の安定しないストリンギングに長年悩まされた経験から創業しました(ストーリーを読む)。自分の張り替え間隔がわかれば、自宅でストリンギングすることで、ショップの都合ではなく記録が示すタイミングで張り替えられます。Pro Stringer CybeXは、テニス、バドミントン、スカッシュのラケットに対応したタッチスクリーン搭載のデジタルストリングマシンです。



