ストリンギングメソッドとは、ストリングをフレームにどう張るかという方法のことです。1本張りか2本張りか、メインとクロスをどこから張り始めるか、ストリングをプレストレッチするかどうか、そしてどんなマシンで引くか。同じストリングを同じ基準テンションで張った2本のラケットでも、これらの選択が違えば打球感は変わります。プロは一度メソッドを決めたら、それを正確に繰り返します。特定のセッティングよりも、この習慣こそ一般プレーヤーが真似できるポイントです。
要点
- 1本張りと2本張りはどちらも有効です。ハイブリッドや、メインとクロスでテンションを分ける場合は2本張りが必要です。
- 張り始めとタイオフの穴は、ラケットメーカーの指示に従ってください。
- 研究によると、同じテンションで引いても、クロスはメインより緩く仕上がるのが一般的です。つまり、選んだ数値と同じくらい、メソッドが仕上がりを左右します。
- プレストレッチもマシンのテンション方式も仕上がりを変えます。気に入ったセッティングが見つかったら、どちらも変えないようにしましょう。
- 真似すべきはプロのスペックではなく、プロのプロセスです。
ストリンギングメソッドに含まれるもの
ストリングとテンションを決めた後も、ストリンガーは仕上がりのストリングベッドを左右するいくつかの判断を行います。
- 1本張りか2本張りか
- メインの張り始めの位置と、クロスを張る方向
- メインとクロスを同じテンションにするか
- ストリングをプレストレッチするか
- テンション方式の種類:コンスタントプルかロックアウト式か
一つひとつは小さな選択です。しかし積み重なると、伝票上のストリングとテンションが同じでも、張り替え後にラケットの感触が変わる理由になります。ストリング選びについてはテニスストリングガイドで、テンションの選び方はテンションガイドで解説しています。
1本張りと2本張り
1本張り
1本のストリングでメインとクロスの両方を張ります。メインを張り終えたら、同じストリングでそのままクロスへ進みます。ノットが少なく済み、ラケット全体を1種類のストリング・1つのテンションで張る場合に自然な選択です。メーカーによっては、自社フレーム向けに、クロスの張り始めと張り終わりの穴を示した1本張りパターンを公開しています。
2本張り
メインとクロスを別々のストリングで張り、それぞれ個別にタイオフします。ノットは増えますが、2種類のストリングを組み合わせるハイブリッドや、メインとクロスで異なるテンションにすることができます。多くのメーカーは1本張りの指示と並べて2本張りの張り始め・タイオフの穴も掲載しているので、選ぶ前にフレームの指定を確認しましょう。
| 項目 | 1本張り | 2本張り |
|---|---|---|
| 使用するストリング | 1本 | 2本 |
| ノット | 少ない | 多い |
| ハイブリッド | 不可 | 可能 |
| メインとクロスの別テンション | 実用的でない | 簡単 |
| 主な用途 | 1種類のストリング・1つのテンション | ハイブリッド・別テンション |
どちらか一方が本質的に優れているわけではありません。1種類のストリングを1つのテンションで使い、フレームの指示でも認められているなら、1本張りがシンプルです。ハイブリッドやメインとクロスの別テンションにしたいなら、2本張りを選びましょう。
張り始め:メインとクロスはどこから始めるか
ほとんどのテニスラケットでは、フレームに均等に負荷がかかるよう、メインを中央から外側へ左右交互に張ります。最初のメインをヘッド側とスロート側のどちらから通すかはフレームのパターンによって異なり、メーカーの指示に記載されています。Pro Stringerのマシンガイドには、ヘッドスタートとスロートスタートそれぞれの動画があります。CybeXガイドをご覧ください。
クロスは通常、ヘッドからスロートに向かって張ります。HEADのガイドによると、スロート側の最後の数本がもっとも編みにくい部分です。最初のクロスは、スターティングノットではなくスターティングクランプで始めることがよくあります。HEADのストリンギングガイドで、ツアーストリンガーのRichard Parnellは、ストリングへのダメージが少なく、仕上がりのノットも揃うことからクランプを推奨しています。また、クロスの編み方に唯一の正解はなく、ストリングとラケットによって適した方法が変わるため、2通りの方法を覚えておくことを勧めています。
メインとクロス:テンションは同じにするべきか
Parnellのガイドでは、クロスを張り始める前に、メインと同じテンションにするかどうかをまず決めるよう説明しています。なぜこの問いが生まれるのかは、研究が教えてくれます。Sports Engineering誌に掲載された研究で、CrossとBowerは、両方を同じテンションで引いても、クロスは通常メインより低いテンションに落ち着くことを明らかにしました。クロスがメインの間を編み込まれる部分や、グロメットの穴で摩擦が生じるためです。
ここから得られる実践的な教訓は、特定の調整方法ではありません。マシンの数値はあくまで基準であり、実際の打球感はメソッド全体で決まる、ということです。張り上がりのテンションがその数値からどれくらい下がるかはテンションガイドで解説しています。クロスをメインと少し変えて引くプレーヤーもいますが、多くは1つのテンションで統一しています。どちらを選ぶにしても、結果を判断できるよう毎回同じにしましょう。
ハイブリッド張り
ハイブリッドとは、メインとクロスに異なるストリングを使う張り方です。よくある組み合わせは、一方にポリエステルなどの硬めのストリング、もう一方にマルチフィラメントやナチュラルガットなどの柔らかいストリングを使い、両方の長所を活かそうとするものです。ハイブリッドには必ず2本張りが必要です。
ハイブリッドを試す価値があるのは、具体的な問題を解決したいときです。たとえば、硬いストリングのフル張りでは打球感が硬すぎる、柔らかいストリングがすぐに切れてしまう、といった場合です。今のセッティングで問題なくプレーできているなら、プロが使っているという理由でハイブリッドに替えても、効果は期待しにくいでしょう。素材ごとの特性はストリングガイドで解説しています。
プレストレッチ
プレストレッチとは、ストリングを張る前に一定時間テンションをかけておくことです。CrossとBowerの論文は、その理由を次のように説明しています。伸ばされたストリングのテンションロスは、素材内部の結合が徐々に切れることで起こります。その速度は力がかかり始めた直後がもっとも高く、一度切れた結合は基本的に元に戻りません。そのため、プレストレッチをするとその後のテンションロスが緩やかになるのです。
プレストレッチをするかどうか、どのように行うかは、ストリングごとに判断します。ストリングメーカーの推奨を確認し、プレストレッチをする場合は毎回同じ方法で行いましょう。同じ基準テンションでも、プレストレッチをした張り上がりとしていない張り上がりでは、打球感は同じになりません。
コンスタントプルとロックアウト式
マシンのテンション方式もメソッドの一部です。大きく分けて2つの設計があります。
- ロックアウト式:設定テンションまで引いた時点でロックします。クランプするまでの間にストリングが伸び続けると、テンションが下がることがあります。
- コンスタントプル:ストリングが伸びている間も引き続け、クランプするまで設定テンションを保ちます。
マシンメーカーのStringwayは、その違いを次のように説明しています。コンスタントプルでない場合はストリンガーの作業スピードが結果を左右し、手早く作業するストリンガーほど緩く仕上がります。CrossとBowerも、どのマシンにも通じる指摘をしています。テンションを安定させるには技術と忍耐が必要で、ストリンガーのいつもの手順が途中で中断されるだけでも結果が変わることがある、というものです。
つまり、コンスタントプル式とロックアウト式のマシンでは、同じテンションでも打球感が同じとは限りません。どちらが間違いというわけではありませんが、マシンやストリンガーを切り替えると変数が1つ増えます。Pro Stringerのマシンは電子式コンスタントプルのテンションヘッドを採用しています。分銅式マシン、クランプ、マウントについてはストリングマシン比較をご覧ください。
プロのセッティングはどう作られるか
プロの標準的なセッティングというものは存在しません。ストリング、ゲージ、テンション、メソッド、張り替えの頻度はプレーヤーごとに異なり、サーフェスやコンディション、キャリアの段階によっても変わります。公開されたスペックを真似しても、マシン、メソッド、ラケットを張ったタイミングなど、めったに公開されない部分は抜け落ちてしまいます。
プロに共通しているのは、取り組み方です。CrossとBowerは2001年の論文で、プロはどのラケットも同じテンションから使い始められるよう、通常は試合ごとに張り替えていると述べています。ツアーストリンガーは正確で再現性のある手順で作業します。Parnellによれば、ノットが期待どおりに仕上がっていないとラケットを突き返すプレーヤーもいるそうです。Pro Stringerは、ストリンガーやマシンによって仕上がりが違うことに長年悩まされた元ATPプレーヤーで、ニュージーランドのデビスカップ代表でもあるRubin Stathamが創業しました。
一般プレーヤーが学べること
ツアーから学べるのは、道具ではなくプロセスです。
- レシピをすべて記録する。ストリング、ゲージ、メインとクロスのテンション、1本張りか2本張りか、プレストレッチの有無、マシンまたはストリンガー、日付を書き留めましょう。
- 変えるのは一度に1つだけ。判断する前に、何度かプレーしてみましょう。
- メソッドは固定する。同じストリンガーまたは同じマシン、同じ手順で張れば、違いが自分の加えた変更によるものだと分かります。
- メーカーの指定から始める。フレームに印字されている、または公開されているパターンとテンション範囲を使いましょう。
- 本当の問題を解決する。セッティングを変えるのは、何かがうまくいっていないときです。プロが別のものを使っているからではありません。
マウントからタイオフまで、張り替えの実践的な手順は張り替えガイドにまとめています。
よくある質問
2本張りは1本張りより優れていますか?
それ自体で優れているわけではありません。丁寧に張れば、どちらも良い結果が得られます。ハイブリッドや別テンションには2本張りが必要で、1種類のストリングを使うなら1本張りのほうがシンプルです。フレームの指示で認められている方法に従ってください。
別のメソッドを試すには張り替えが必要ですか?
はい。メソッドはラケットを張る時点で決まるため、変えるなら次の張り替えのタイミングです。その張り替えでは、メソッド以外は何も変えないようにしましょう。



